貿易実務における受発注の流れ

毎日多くの書類を、場合によっては世界各国のディーラーとやり取りすることとなるドイツの貿易事務の現場、その業務内容は論理的思考能力と社内の諸部署との折衝能力が問われると言えます。注文から発送までの流れは企業によって異なると言えますが、オーソドックスな例を挙げると以下のような手順を踏むことが多いと言えるでしょう。

  1. 見積もりの提示(Angebot)       営業→顧客
  2. 発注書の提示(Purchase Order)     顧客→営業/セールスアシスタント
  3. 諸条件の確認(在庫、納期等)     社内作業                   
  4. 注文確認書の提示(Order Confirmation)  セールスアシスタント→顧客
  5. 支払い※               顧客→売り手企業                                      
  6. 梱包・書類作成            社内作業
  7. 発送                 フォワーダーの手に
  1. 見積もりの提示

一般的に、見積もりの提示は購買に先行して担当営業から顧客の手に渡っています。企業によって異なりますが、提示されている見積書の内容や協定されている価格に関しては社内システムなどを通じて閲覧可能になっていることが多いでしょう。

  1. 発注書の提示

発注書は買い手側から売り手側にメールや社内システムなどの形式で投げられることが多いと言えます。発注書を受け取ったからといって売買契約が成立するわけではありません。在庫や納期など、売り手側企業にとっても確認することがあり、あくまで発注書の提示は買い手側の意思表示に過ぎません。

  1. 提示諸条件の確認(在庫、納期など)

貿易事務、セールスアシスタントにとって活躍の期待される場面でもあります。社内の諸部署と連携し、在庫の有無や、なければ次回生産完了分の確保、フォワーダーへの見積もり依頼を通じた納期の確認などはこのタイミングで行われることが多いと言えます。国内発送と異なり、貿易事務の場合注文確認書(Order Confirmation)に支払い条件や引き渡し条件なども含まれて記載されることが多いため、こういった内容のすり合わせも同様におこなわれることとなります。

  1. 注文確認書の提示(Order Confirmation

詳細の説明はOrder Confirmationの記事に譲りますが、商品の売買に関わる諸条件が出揃ったら売り手から買い手に対し、以下のような内容の記載された注文確認書(一般的には書面でもって)が提示されることとなります。

  • 製品番号とスペック
  • 価格
  • 数量
  • 支払い条件
  • 引き渡し条件
  • 引き渡し日
  • 運送・保険費用等その他諸経費

この注文確認書の発行をもって、売り手と買い手と双方に対して売買契約履行の義務が生じることとなります。

  1. 支払い(※)

支払い条件の項で紹介した通り、貿易実務における支払いタームは多岐にわたり、必ずしもこのタイミングで支払いが行われるとは限りません。もっとも、キャンセルや引き取り拒否のリスクを回避するために、一般的には「支払いを回収できる手段を講じて」から梱包や書類作成、発送といった作業が行われることとなります。

  1. 梱包・書類作成

実際の業務で用いられる書類は支払い条件や貿易条件、業界や企業、取引先や出荷元の国によって異なるため、ここでは詳細は割愛します。書類作成や発送準備もセールスアシスタントの重要な業務内容の一つと言え、ここでも様々な部署や業者(主にフォワーダー)との連携が必要になってくることでしょう。

一度書類が作成され、梱包の完了した物品は変更が複雑化するため、基本的にはこのプロセス以降での顧客からの変更要求は飲まれにくい、またはキャンセル料の生じることとなります。

  1. 発送

ここまで完了したら、最後に発送が行われます。売り手企業が今後どこまで対応するのかは支払い条件や引き渡し条件次第ですが、Cash Against DocumentやL/Cのような支払い条件であると書類の不備などのトラブルが起こり得ますし、後々の税関上のトラブルなども生じることがあるため気は抜けません。

 

 

 

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